中国茶と聞いてあなたはどんなお茶が思い浮かぶでしょうか?
烏龍茶?それともジャスミン茶?はたまたプーアル茶?
さすが!どれも正解です!
では、中国で最も飲まれているお茶は何でしょうか?
烏龍茶?
中国と言えばやはり烏龍茶のイメージが日本人には強いですが、実は、正解は日本と同じく「緑茶」なんですよね。茶葉生産量としても70%が緑茶なんです。
実際、茶葉の卸売市場に行っても、緑茶の占める割合が多いです。
今回は、中国茶の魅力にハマって20年以上ほぼ毎日飲んでいる筆者が、本場「中国緑茶」の味わいや楽しみ方、一緒に食べると良いお茶うけなどについて紹介して行きます。
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オススメ中国緑茶の銘柄4選!
緑茶は全て「不発酵茶」です。
摘み取った茶葉をすぐに高温で熱処理をして茶葉の酸化酵素の働きを止めてしまいます。
なので発酵は進まず、あのような爽やかな味わいになるんですね。
中国の緑茶はその茶葉の乾燥工程の違いにより大きく分けて2種類あり、釜炒りによって加熱し続けて乾燥までさせてしまう「炒青」(チャオチン)製法と、ある程度の釜入り後、灰を被せた炭火などの輻射熱で乾燥させる「烘青」(ホンチン)製法があります。
この製法の違いによって、香りや味に結構特色が出ますので、今回はそれぞれの手法で製茶された中国緑茶で、筆者が実際に飲んだものを紹介して行きます。
西湖龍井(シーフーロンジン)
「炒青」(チャオチン)の製法で作られる中国で最も有名な緑茶。
揚子江の南を江南地方と言い、特に浙江省杭州市にある「西湖」(シーフー)と言う湖の周りで生産される茶葉のみを西湖龍井茶としており、体系的な細かい等級管理がされています。
龍井村と言う所には龍が住むと伝説のある「老龍井」という枯れない泉が湧いています。
綺麗な水の有る所に美味しい茶葉が育つと言う事ですね。
筆者が飲んだ「一級茶葉」の感じでは、香りは日本茶に似たやや香ばしいお茶らしい香りに豆や栗を噛んだ時の香りがわずかにプラスされてる感じ。
水色は澄んだ黄緑色で味は淡く甘く上品で最後にかすかに渋みが感じられますが、甘味の方が強く残ります。
苦みや渋みはほとんど感じない美味しいお茶でした。
一緒に食べると美味しいお茶うけは、味の薄いお菓子が合いますね。
例えば、中国ではよく食べるのですが、炒った「ヒマワリの種」や「スイカの種」、「かぼちゃの種」など種子類が一般的です。
また、ドライフルーツも良く合い、「マンゴー」や「レーズン」そして筆者おすすめは「イチジク」です。
あまり強烈に砂糖漬けになっている甘い物より、自然な物の方が合いますね。
中国の緑茶は料理と一緒にと言うよりは、ティータイムとしてちょっとしたお菓子と一緒にの方が合うように思います。
碧螺春(ビールオチュン)
「炒青」(チャオチン)の製法で作られる中でも貴重なお茶。
上海の西にある上海蟹の養殖で有名な「太湖」沿岸の、東山一帯を産地とする。
柑橘類の樹の下に植えられた茶樹から作られ、2cmにも満たない新芽の部分のみで造られる貴重な茶葉で、ちりちりに曲がった細い線形に白い粉を吹いたような綿毛が特徴的な茶葉です。
500g(一斤)を作るには、なんと7万~8万の新芽を必要とするそうです。
凄いですよね!
清の康熙帝時代には貢茶として献上されていた銘茶だそうです。
筆者が飲んだ感じでは、とても淡く甘い香りに淡い黄緑色、淡い味という印象。
渋みや苦みは一切無く、淡い中にも清々しい甘味が感じられ、それが後味までずっと続くという感じでした。
ドライフルーツや種子類、ナッツ類が合うと思います。
太平猴魁(タイピンホウクイ)
「烘青」(ホンチン)の製法で作られ、その茶葉のデカさで有名。
年間200日の降雨で深い霧が掛かる水墨画の世界のような安徽省の名山「黄山」の北側が産地。
ちなみに中国では「黄山を見ずして山を見たと言うなかれ」と言われるほどの名山名勝地だそうです。
しっかり生育した葉を一芯二葉で摘み、あまり揉まずに仕上げているので、茶葉が4から8cmほどもあります。
水色はしっかりした黄緑色。
1915年パナマ万博に出品、一等金賞を受賞して海外にも有名になった美味しい緑茶。
筆者が飲んだ感じでは、大きく生育した茶葉で作られているせいか、淡いというよりはしっかりした緑茶の濃いめの甘味と、やや青草い爽やかな香りが印象的なお茶ですね。
甘味もしっかり後味にまで残り、コクがあると言う感じです。
味がしっかりしているので、月餅などの甘いお菓子、洋菓子のケーキなどにも合うと思いますよ。
黄山毛峰(ホァンシャンマオフェン)
「烘青」(ホンチン)の製法で作られ、高級なものは一芯一葉で摘まれる。
中国十大銘茶、中国三大緑茶、そして国家礼品茶のうちの一つという凄いお茶で、中国人なら誰もが知っているお茶。
太平猴魁と同じく、安徽省の名山「黄山」で採れる高級高山茶です。
黄山毛峰の「毛」(マオ)は、新芽の葉の毛のことを表し、「峰」(フェン)は、葉の形状がまるで山の峰のごとく尖っていることを表します。
一芯一葉と言う事は、茶樹の一番先端の若芽の部分しか使わない訳ですから僅少で、全て手摘みという手間の掛かった茶葉なんですね。
高山茶らしく農薬も肥料も一切使用しないで栽培される品質の良い茶葉が多いです。
筆者が飲んだ感じでは、淡い甘みを感じ、後味まで甘味が残り、香りは若干の青臭さとややスモーキーな香りがとても印象的な美味しいお茶です。
黄山は、一年を通じて霧が多い地域の為、直射日光が遮られ、ゆっくり茶葉が成長するので、旨味が熟成されやすく良質の茶葉が育つんですね。
淡い味と香りなので、ドライフルーツやナッツ類が合うと思いますよ。
日本の緑茶と中国の緑茶の違いとは?
日本の緑茶と中国の緑茶って同じ?
飲んでみると分かりますが、これが結構違います。
日本の場合、緑茶の味わいは、「渋み」と「苦み」そして「甘味(旨味)」のバランスを楽しみますが、中国の場合は、「香り」と「甘味」が重要視され、「渋み」や「苦み」は嫌われる為、茶葉の品質も製法もここにこだわっています。
そして、淹れる時にもそれは表れていて、お湯の温度が違います。
日本の緑茶は70℃から80℃前後とぬる目、中国の緑茶は沸騰寸前か一度沸騰させて落ち着かせた80℃から85℃前後のお湯を使います。
日本の緑茶の味は渋みや苦みが最初からガツンと来てはっきりと濃い味ですよね。
反対に中国の緑茶は最初「え?薄っ!お湯か?」と思うぐらい淡い味です(笑)。
でも、慎重に味わうとその淡い味の中に芳醇な甘さが存在し、後味にまでその甘さが良い香りと共に続きます。
その違いは何処から来るのかと言うと、製茶方法の違いにあるんですね。
日本の緑茶は『蒸し』ますが、中国の緑茶は『炒り』ます。
つまり熱処理の違いで味の違いが出ると言う事ですね。
見た目の違いは水色。
日本茶は濁りが旨味が出ている証拠としていますが、中国の緑茶は澄んだ黄緑色です。
中国の緑茶は茶葉の産毛が浮いてくるものがあります。
初めてだとほこりが混入したのかな?と疑ってしまいますが、これは上手な製茶の証拠だそうです。
中国の緑茶は広い地域で生産されている為、茶葉の形や大きさ、色もかなり色んな種類が存在しています。
飲み方にも文化の違いが?
茶を淹れる時の水は弱酸性の「軟水」を使いましょう。
硬度が高い(ミネラル豊富)とお茶の成分があまり抽出出来ず、例え高価な良い茶葉を使ったとしても美味しくありません。
この辺りは珈琲を淹れる時の水と同じですね。日本の緑茶でも同じです。
でも茶器に文化の違いを感じるんですよ。
日本の緑茶を飲む時は、磁器(陶器)と急須を一般的に使いますよね。
しかし、中国の緑茶は飲む時に耐熱グラスを使用する事が多いです。たまに陶器の蓋碗(ガイワン)も使います(蓋付きの浅い湯飲み)。
これには理由があって、茶葉が開いてくると、摘んだ時の形に戻っていきます。
一芯一葉、一芯二葉などの手摘みした際の芽の部分のかたちが、段々と良く分かってきますが、
茶の浮き沈みと共にこの様を愛でると言うか観察するのも茶の楽しみと言う事なのです。
日本の緑茶を淹れる時は茶葉は見えませんからね。
まとめ
いかがだったでしょうか?
中国でも一番飲まれているのは緑茶だと言うのは、イメージが違ったのではないでしょうか?
そして、同じ緑茶でも製法の違いによって様々な味わいに仕上げられていて、葉の形や色、葉の大きさなどの違いにより、実にたくさんの種類の緑茶が広い地域で生産されています。
中国で茶葉卸売業を営んでいる人に聞いても、「全部で何種類あるかなんて分からない。」と言っていました(笑)。
少なくとも300種類とも800種類とも言われるようですので、とても全てを制覇するなんて出来ないですね(笑)。
また、中国のお茶愛好家の間では、茶葉、茶器、茶道具から、テーブルや椅子、香り(お香)、書、音楽など、自分が求める心地よい茶空間を作ることが「粋」とされ、自らのこだわりを茶空間に集め、極上の中国茶を愉しんでいます。
日本でも「茶道」が、茶室から茶道具、着物、お手前とこだわり尽くした空間でお茶を楽しむ文化がありますよね。
心地よい空間で、大好きな極上の茶を淹れて楽しむという意味では同じ。
良き時間を楽しんでいきたいと思います。
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